どんなときでも「明かりを届ける」ために

「データ」に見出した 業務変革の道筋

システム運用業務の属人化を解消する

データドリブンな運用監視

四国電力株式会社

四国地域を中心に発電事業や電力小売事業を行っている四国電力グループ。「電気の先へ。暮らしの中へ。」というビジョンを掲げ、現在では電気だけにとどまらず、通信や建設、運輸、農業、介護、給食などさまざまな分野でも地域の経済と暮らしを支えています。直近の新たな取り組みとしては観光事業にも乗り出し、高松市と瀬戸内海の直島にホテルの開業を予定しています。

さらに、脱炭素化社会を目指したGX(グリーントランスフォーメーション)が叫ばれる中で、同社は電源の低炭素化・脱炭素化も重要な課題として掲げており、分散型エネルギー事業への対応も進めています。

もちろん、同社が担っている最大の社会的責任が、電力の安全かつ安定的な供給であることは昔も今も変わりません。エネルギーの安全性(Safety)を前提に、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に実現する「S+3E」の考え方や、事業経営におけるリスク管理やレジリエンスの強化をあらためて重視しています

Wind Farm on Mountain

電力の安定供給のためにも必須となるのが、その事業を支えているさまざまなシステムの保守運用業務の高度化です。

四国電力ではERPを中心とする基幹系や従業員の日常業務を支える情報系のほか、四国地域200万世帯の暮らしを支える電力事業者特有の電気の託送や顧客管理など、合計600を超える重要なシステムを運用しています。

四国電力はグループ会社のSTNetと連携してこれらのシステムの保守運用業務を行っていいましたが、長い間かけて増大したIT資産とデジタル化への期待の高まりを受け、課題が顕在化しはじめていました。四国電力 情報システム部 セキュリティ統括・管理グループリーダーの村上 祐之氏は次のように語ります。

「保守運用の主担当者はシステムごとにほぼ固定されていたため、障害発生時の対応も特定の人に依存しやすい状況でした。もちろん、現時点ではまったく支障なく保守運用業務が回っていますが、担当者の高齢化も進んでいくため、今後の人材不足が懸念されています」(村上氏)

さらに、セキュリティ統括・管理グループ 副リーダーの筒井 康人氏はこのように続けます。

「電力自由化によって参入した多くの事業者のシステムと接続する必要性から当社のシステムも複雑化しており、この10年ほどで規模が倍以上に膨らんだものもあります。24時間365日の無停止稼働が求められるシステムも増えており、休日や夜間を問わず障害対応にあたらなければならない担当者の精神的な負担は大きく、人手のみに頼った運用保守業務は限界に達しつつありました」

24時間365日の無停止稼働が求められるシステムも増えており、休日や夜間を問わず障害対応にあたらなければならない担当者の精神的な負担は大きく、人手のみに頼った運用保守業務は限界に達しつつありました。

四国電力
情報システム部 セキュリティ統括・管理グループリーダー 村上 祐之 氏

属人化を解消した

保守運用業務の抜本的な効率化

事業環境が変化し続けることを鑑みても、今後もますます連携するシステムは増えていくでしょう。さらに新しくシステムを導入するケースもあるとすれば、システム運用の負担はますます高くなっていきます。ですが、増え続けるシステムに対して無尽蔵に運用の人員を増やしていけるわけではありません。今後も限られた人数で、多岐にわたるシステムの安定稼働を担っていく必要があります。

そこで必須となるのが、属人化を解消する抜本的な業務改革です。

「発生した障害に対して、固定化された主担当者の経験や勘に頼るのではなく、データドリブンで原因や影響範囲を分析する仕組みを設けることで、人に依存せず同レベルの対応ができるようにすることを目指しています」(村上氏)

もちろん四国電力でも以前から運用監視ツールを導入し、多岐にわたるシステムの稼働状況をモニタリングしていました。しかし、アラートやエラーメッセージはシステムごとに発せられ、一元的に確認する方法がなく、状況を把握するのに時間と手間を要していました。システムの中には、コンソール画面に表示されたメッセージをそのまま“伝言ゲーム”のように主担当者に連絡するケースもありました。

「これまで十分に活用できていなかった運用データを統合的に可視化して、システムに何が起こっているのか直感的な“気づき”を与えることで、誰がアラートを受けとっても各自の判断で対処ができるようにしたいと考えました」(筒井氏)

アラートやエラーメッセージはシステムごとに上がってくるため、状況を把握するのに時間がかかっていました。運用データを一元的に可視化することで、この課題を解決したいと考えました。

四国電力
情報システム部 セキュリティ統括・管理グループ 副リーダー 筒井 康人 氏
Female security guards working in surveillance room, monitoring cctv and discussing.

根本的な業務改革に

共に臨めるパートナーを選定

 

四国電力における各システムの運用データは、複数のITインフラやアプリケーションに散在しています。これが今まで十分な活用が進んでいなかった理由でもあり、課題解決は容易ではありません。

どのシステムのデータをどのように活用すれば、影響範囲を可視化してリカバリ対処箇所の調査時間を削減できるのか。また、システムの相関関係を可視化して効率的に根本原因を特定できるのかなど、まったく手探りの状態でした。

運用データは、複数のITインフラやアプリケーションに散在しているため、課題解決は容易ではありません。根本的な業務の見直しから、共にPoCに臨んでくれるパートナーを探しました。

四国電力
情報システム部 セキュリティ統括・管理グループリーダー 村上 祐之 氏
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業務プロセスの可視化から始める

システム運用の効率化

既存の運用監視業務における課題を踏まえて、データを活用した業務改革のアプローチを四国電力に提案したのがキンドリルでした。筒井氏は提案当時の印象をこう振り返ります。

「2022年の年末にの打合せにて業務改善の要望を伝えたところ、2023年の年明けに早くも解決策の提示をいただきました。その洗練された内容に、これなら私たちのやりたいことを実現できると直感しました」

キンドリルの支援のもと、四国電力が具体的に取り組みを前に進めるためにまず取り組んだのは、バリューストリームマッピング(VSM)の手法を用いた現行の運用監視業務プロセスの整理と課題の可視化です。

例えば、現状の障害対応の業務ではどの担当者がどのシステムからどのような情報をもとに対応を行い、さらにそこではどれくらい時間がかかっているのか、どのように業務フローが流れていくのかを徹底的に洗い出していきます。それを踏まえてあるべき業務の姿を描くとともに、後のデータ活用のPoCのフェーズにて検証する項目を抽出していきました。

 この作業を行なった結果、対応に長い時間を要すると思われていた夜間休日の障害対応には十分な対応ができていることがわかった一方で、対応に時間のかかるケースに2つの傾向があることがわかりました。1つ目は「担当者が見つからなかったとき」、もう1つは「システムの影響範囲が広範囲に及ぶとき」です。このことから、問題を解決するために複数のシステムの状況を各担当者に確認しなければならない現場スタッフの負荷の高さがあらためて明らかになりました。

VSMで情報を整理したあとはデータ活用のための設計を行います。各システムから運用データを収集するツールとしてSplunkを選定し、あるべき業務フローに向けて必要となるデータを統合的に可視化していきます。

こうして四国電力では、各システムの相関関係ならびに相互の影響範囲を把握し、障害発生時に根本原因を迅速かつ効率的に特定できるようにするほか、リカバリ対象箇所を調査する時間を短縮できる仕組みを作り上げていきました。

キンドリルは、現場の負荷の高さに対して共感性を持ち、実際の業務で予想される問題に対しても十分な想定をしながらプロジェクトを進行してくれました。教科書通りのコンサルティングではない、自分たちで経験しているからこそできる現実的なアドバイスを受けることができ、根本的に業務を見直す良い機会にもなりました。

四国電力
情報システム部 セキュリティ統括・管理グループリーダー 村上 祐之 氏

PoCの成果と手応えをもとに

データドリブンの運用へのシフトを目指す

四国電力は、上記の解決策の有効性を検証するPoCを2023年7月から約3カ月間にわたり実施しました。同社の電力供給業務を支えるシステムのうち、複数の仮想サーバーから構成され、特に障害対応の効率化が求められていたシステムを今回のPoCの対象とし、実データを用いて効果検証を行いました。

「複数の仮想サーバーにまたがって発生した異常を時系列で追いながら1つの監視画面に集約して可視化できるので、障害を検知したかなり早い段階で根本原因を特定できるようになりました」と筒井氏はその成果を示します。

「障害の影響範囲を推定するまでの時間も大幅に短縮できることが確認できました。また、過去によく似た事象が発生した際に、対処したナレッジ(履歴データ)と突き合わせることで復旧にも役立てることができるのではないかと考えています。その意味で、今回のPoCは今後の展開に向けて大きな可能性を感じました」(村上氏)

さらに、同じく運用業務に携わるセキュリティ統括・管理グループの佐井 綾乃氏も、このように話します。

「私は保守運用業務の担当となってまだ日が浅いこともあり、監視センターからアラートの連絡を受けても、それがどのシステムに起因するのかもわからなかったのですが、今回の新たな仕組みがあれば容易に判断できるようになります。例えばCPU負荷が急伸したと連絡が入った場合も、1週間前の同じ曜日、同じ時間帯と状況を比較してどんな差異があるのか確認できます。私と同様に経験の浅い担当者もシステムに対する理解を深め、スムーズに業務にあたることが可能になると実感しています」

データドリブンな運用監視業務の実現によって、長らく続けてきた業務プロセスの刷新に挑む四国電力。今回のPoCを通じてつかんだ多くの成果と手応えを踏まえ、いよいよ全社システムへの本番適用に向けたフェーズに乗り出し、次のステップへと歩みを進めています。 

保守運用業務から属人性が排除され、手順の標準化・平準化がある程度進んだあかつきには、さらにデータドリブンな運用を推進していく観点から、障害復旧対応の自動化や予知保全といったテーマにも取り組んでいきたいと思っています 

四国電力
情報システム部 セキュリティ統括・管理グループ 副リーダー 筒井 康人 氏
伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)

四国電力株式会社

香川県高松市に本店を置く電力会社で、四国地域を対象エリアとして電力小売事業や発電事業を行っています。電力供給を担う一般送配電事業者の四国電力送配電や、情報システム開発事業やプラットフォーム事業、通信事業などのサービスを提供するSTNetなどのグループ会社があり、エネルギーを中心とした人々の生活に関わる様々なサービスを高い品質で提供し続けることで、快適・安全・安心な暮らしと地域の発展に貢献しています。 

Meet the team

Yonden Murakami

村上 祐之 氏

四国電力株式会社 情報システム部 セキュリティ統括・管理グループ リーダー
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筒井 康人 氏

四国電力株式会社 情報システム部 セキュリティ統括・管理グループ 副リーダー
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佐井 綾乃 氏

四国電力株式会社 情報システム部 セキュリティ統括・管理グループ
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清水 真理子

キンドリルジャパン キンドリルバイタル事業部 シニアリーダー

木原 千寿

キンドリルジャパン データ&AI事業部 アーキテクト